パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
日本美術大学。
関東にある美術大学の中で、三本指に入る名門だ。
油絵や日本画などの芸術系コースが強く、
出身校としている有名画家が数多くいる。
志望学生は全国から集まる。
そして才能ある選ばれし者だけが入れる難関大学として知られていた。
私の歯切れの悪い返事に、野田はしばらく黙ったあと欠伸をした。
野田は家がお金持ち。
そして成績もいい。
この池田スクールに入ってきた時は野田も日美を目指していたが、彼がニ年の時に進路変更でランクを下げていた。
私より絵が上手いというのに。
鉛筆の芯が流れるように、スケッチブックの少しだけ凹凸のある面を滑ってゆく。
だんだんとそれは形になり、授業がはじまる10分前にはきれいに明暗のついた完成系になっていた。
「鷹宮ってやっぱ上手いよなー、描くの」
「はは、どうも」
私の肩口から野田がスケッチブックを覗き込む。
それ、アンタが言う?とわたしは心の中で悪態をついた。
「えー、では始めるので席について」
いつもと同じ変な柄のシャツを着た、うちの授業の担当先生が教室につくなりやる気のなさそうな声で呼びかける。
私を含めて20人ほどが、それぞれ木椅子に腰掛け、先生の方を向いた。