きみの色

私が思っていたよりも強烈なエピソードが出てきて唖然とする。


いや、まぁ…理由はどうであれ、納得できる。

彼が女子の中で注目の的になってしまうことは、だいたい想像がつく。



「ほら、描けよ」



柳は椅子に座ると長い足を組んですっと目を細めてこちらを見た。



「アンタ史上1番美しい顔なんだろ?」



そして、愉快そうに唇の端を持ち上げる。



「…もう、黙って」



だめだ、叶わない。



私は言われるがままにスケッチブックと鉛筆をとりだして彼の目の前に座った。

そしてこちらをご機嫌そうに眺める男を勢いよく描き始める。


彼の言った言葉通りのその美しい顔を描き始めた途端、私の鉛筆は止まらなくなってしまった。


鉛筆の擦れる音だけが部屋に響き渡る。



楽しい。

ただその感情だけが私を支配する。



つくづくその美しさに惚れ惚れする。


彼はこちらをじっと見ていて、視線がぶつかるたびに身体中が熱くなっていくのを感じた。


けれど、そんなことを気にしちゃいられない。



私はいまこの書きたい気持ちだけを考えてキャンバスにぶつけた。
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