パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
「言っただろ…、アンタのことが気になるって」
彼は長い睫毛を伏せる。
「…初めてデイジーの前でアンタを見た時、何かにずっと怒ってるみたいだった。
きっと、何かムカつくことがあったんだろうなーって思ってた。ーーだけど…」
ゆっくりと、言葉を紡いでいくみたいな話し方。
「街でアンタを見かけるたびに、いつも不機嫌そうに、…こう眉間に皺を寄せてた」
彼はきっと、いつもの私の姿を思い浮かべている。
そしてそのまま少しだけ目を閉じた。
「それが羨ましくて。
……それで気がついたらアンタが行きそうな場所に足を向けてた。
…もしかしたら、また会えるかもしれないって」
「……羨ましい?」
どこが?どうして?
「……ずっと、感情を表に出すことを制限された環境にいたから」
そう言って自嘲気味に笑う。
彼はどこか空虚を見つめていて、何かを考えているようだ。
「だから、怒ってるアンタを見た時、ちょっとスカッとした。
アンタみたいに怒れたら、もっと違ってたかもしれない」
独り言のように言葉を続ける。
何が?と聞こうとした時だった。
突然スマホのバイブレーションの音が部屋に鳴り響く。
「悪い」と、彼は断りを入れてからその通話に出た。
相手の声は聞こえない。
何度か相槌を打ったあと、柳は「わかった」とだけ言って通話を切った。