パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
彼の正体





「悪い、遅くなった」



ドアを開けると、カランコロンとドアベルの綺麗な音色が勢いよくなった。



「ちょっと、もうちょっと優しくドア開けてよ!」



ここのオーナーの蘭子が、カウンターの向こうから怒鳴ったのを横目に、奥の座席に向かう。

他の客はカウンターに2人、中年の男女が一組だけ。



U字になった革製の座席に、由井とあさひ、そして他3人の生徒がいるのがみえた。


俺が近づくなり、由井以外の4人が立ち上がってこちらにお辞儀しようとしたのを「やめろ」と言って制す。



「言ってた1年の奴らは?」



「病院。1人は骨折、もう1人は頭を鉄棒かなんかで殴られて重症」



由井は体を折り曲げて、机に突っ伏した。

隣にいたあさひが声を張り上げる。



「今月これでもう5人目ッスよ!?天塚の奴ら、ぜってぇぶっ潰す!」



「流石にちょっとひどいよな。ほぼ毎日街で見かけるぜ、天塚の野郎」



「今回も?」と聞くと由井が腕を組みながら頷いた。



「あぁ。歩いてたところを急に後ろから襲われたらしい。6人がかりで囲んできたって」



「それに、天塚の奴ら街中の中高生に変なクスリ売りつけてるって噂もあるみたいッス。
バイト先の店長の娘も、グレーのブレザーの人達に売りつけられたって言ってました」




「クスリぃー?どうなってんだよ天塚は」




…まずいな。



うちだけならともかく、街中の人達にまでとなると危うい。


…さっきまで一緒だったはづきという子が、天塚に絡まれていた事を思い出す。

天塚を放っておけば、またそういったことも起こり得てしまうかもしれない。

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