パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
「頭は?なんて奴?」
「え?…なんだったかなぁ、確か竹倉だか安倉だとかなんとか…」
うーんと唸る由井を遮るようにしてあさひが身を乗り出した。
「笹倉って奴ッス。…こう、左右を刈り上げてて、金髪を後ろでひとまとめにしてる…」
「こんな感じに!」とあさひが、その笹倉というやつの髪型を真似て見せる。
「どこにいんの?」
「天塚なら大体はずれにある鉄加工とかしてた工場じゃね?今はもう使われてない廃工場らしいけど…俺一回そこでやり合ったことあるし」
「どっちだったんスか?勝ったの」
「俺だよ!だからおかしいって話だろ。
負けたことある奴らがなんでこんなしぶとくちょっかいかけてくんだよ!」
天塚の奴らは前々からそうだ。
やってもやってゾンビみたいに起き上がってやり返しに来ては、阿久津沢を潰すタイミングを狙ってる。
「住所教えて。行ってくる」
「はぁ!?1人でかよ!」
由井が立ち上がった衝撃で、テーブルの上に乗っていたグラスがガチャンと音を立てた。
「あぁ。みんなはもう帰っていい」
「柳さん、今の時間流石に1人はまずいんじゃ…」
あさひのいう通り、今の時間だと
10人以上は集まっているのは容易に想像がつく。
「由井、バイクの鍵」
手を差し出すと、由井は渋々と言った表情でバイクの鍵を取り出した。
そのまま渡してくるのかと思いきや、俺の手に載せる寸前で、その動きを止める。
「やっぱなし、俺が送る。手は出さない、それでいいだろ?」
俺の合意を得ると、カウンターに置いてあったヘルメットを持ち出入り口に向かった。
あさひには「また連絡する」とだけ伝えて座席を立つ。
「嘘でしょあんたたち、今から喧嘩しに行くわけ?」
カウンターからありえない、と言った声が飛んでくる。
「ねーちゃん、あさひたち帰りに送ったげて!頼んだわ!」
急いでいる由井の後を追って店を出ると、駐車場に止めてあったバイクの後ろにまたがり街を飛び出した。
エンジンの音が、車体を伝って体に響いてくる。
ポケットには、先ほどはづきからもらった絵が綺麗に折りたたまれて入っていた。