パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-





梅雨が明け、私は塾とバイトを往復するだけの毎日を送っていた。

気温もかなり上がり、外を歩いているだけで露出している肌がジリジリと痛む。



あの美しい男に連絡しろと言われたけれど、そういえば連絡先すら知らないことに後から気がついた。


会いたくても会えない日が続いていた私は
とうとう今日、話にあった塾の隣にあるビルの前に来てしまった。



ここの4階、だったよね…



本当にこんなところにバーなんてあるのだろうか。


もう数年も隣のビルに通っていたけど、そんな気配一度も感じたことがないけど。


一階は不動産屋さんになっていて、道路に向かったガラス窓に、いくつもの賃貸情報の紙から貼られてある。

その不動産屋とは壁を隔てたビルの端に、小さなエントランスがあって、ビル全体の郵便ボックスと、ビルに入っているテナントの札が張られた掲示板が見えた。


半信半疑でビルに足を踏み入れて見えたのは、奥にある小さな階段。


私はその狭くて小さな階段を、ゆっくりと登った。



流石に夏に4階まで階段で登るとなると暑い。

4Fの文字が見えた頃には額に汗が滲んでしまっていた。



腕で拭いながら呼吸を整える。



小さな踊り場の横に、黒いペンキで塗られた木製のおしゃれなドアが見えてきた。


ガラスは白い花の模様のようなステンドグラスになっていて、中の様子を見ることはできない。



ドアの前の小さな椅子の上に
『Dining Bar orchid』と書かれたボードが置いてある。



ここだ…

本当にあった。



恐る恐るドアノブを回すと、ドアベルが軽快な音を立てて私を迎え入れてくれた。

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