パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
「中で待ちますか?柳さんならもう少ししたら来ると思いますけど…」
どうやら彼はいないらしい。
…残念。
「ううん、ちょっとのぞいてみただけだから…。それに今から隣のビルで授業なんだ」
「授業?」
「うん、えっと…ほら!」
首を傾げる男の子に説明するために、店に入ってすぐの所にある窓に駆け寄った。
ここからなら位置的に見えるはず…と、カーテンを開けて下を見下ろすと、隣のビルの小さなベランダが見える。
あった。
ベランダに面した窓の向こうには、本や画材がごちゃごちゃと置いてある準備室の様子が覗けた。
「あそこで絵を習ってるの」
窓越しに指さすと、隣に来た赤髪の子が身を乗り出して覗き込む。
「あー、本当だ。だから柳さんいつも…」
言いかけてから「おっと」と小さく呟やく。
「…?」
「いや!何でもないッス」
「そう………。
じゃあ、…私いくね。また授業終わったら来ようかな…」
「そっかぁ。分かりました!柳さんには伝えておきますね!」
ぺこりとお辞儀をする彼を後ろに店を出ようとした時だった。
ーカランコロン
ドアベルの音と共に、木製の扉が開く。
「あ、ナイスタイミング!」