パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
なんと、入ってきたのは彼とこの前一緒にいた茶髪の背の高い人。
そしてその後ろには黒い髪を顎のラインでぱちっと切りそろえたボブの女性。
赤髪の彼の言った通り、本当にナイスタイミングで彼らは現れた。
「柳さん、お客さんッス」
「久しぶり…」
柳は一瞬驚いた顔をしていたが、すぐに「あぁ、久しぶり」と微笑んだ。
横にいた茶髪の男も、「あ!」と、
赤髪の子と同じ反応で私を見る。
「あなたが噂のニコちゃんマークの子ね?いらっしゃい、なんか食べてく?」
奥から黒髪ボブのお姉さんがニコッと笑ってカウンターに入って行った。
この人がここのオーナーのようだ。
背が高くて、凛とした印象の美人だ。
赤いリップがよく似合っている。
彼らの間でやたらとニコちゃんマークという言葉が出てくる気がするけど、きっと私のことをそう呼んでいるんだろう。
「いえ、もう行かなきゃならなくて…。またきます」
すみません、と頭を下げると彼が
「もう行くのか?」と退屈そうな顔で言ってきた。
「今から授業なの」
「そうか」
頷いた彼の顔をよく見ると、唇の端が切れて赤くなっていることに気がつく。
「それ、どうしたの?」
唇の傷以外にも、ところどころ擦り傷のようなものが綺麗な顔に付いている。
「…あー、ちょっと、地域貢献」
「地域貢献?」
カウンターに腰を下ろした茶髪の男が、やれやれといったように項垂れる。