きみの色
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「鷹宮残るの?今日1人だけだぞ?」
2時間の授業が終わり、他の生徒が片付けを終えてぞろぞろと教室を出て行く中、野田がカバンを片手に声をかける。
私は1人残って、もうしばらく描いてから帰るつもりだった。
「うん。もう少しだけ描いてく」
「気をつけて帰れよー」
私しかいなくなった教室にひらひらと手をふりながら、野田は教室から出て行った。
誰もいない教室で描くのは慣れている。
あともう少しだけ、と私は手を動かした。
40分ほど時間が経って、そろそろ帰ろうかと片付け始めた時、筆入れに誤って手が当たってしまい、中に入っていた水が床にこぼれてしまった。
いろんな絵の具が混ざってつくられた黄土色の水が、グレーの床に水たまりを作る。
「うわ、やっちゃった…」
近くに置いてあったカバンが濡れないように急いで退けて、その黄土色の水たまりから遠ざけた。
「雑巾……」
確か準備室にあったはず。
私は小走りで準備室へ向かい、扉を開けた。
部屋にはむせるほどのほこりっぽい匂いが充満している。
扉を開けた勢いで、ぼわっと中の埃っぽい空気が体を吹き抜けた。
ほとんど物置として使用されていたここは、
全然掃除が行き届いておらず、電気をつける前はお化け屋敷のような雰囲気だった。
使い物にならなくなったイーゼルや、割れた像。
使い古した筆を入れたバケツに、参考書、
壊れかけのキャンパス、そして枯れた植物までそのままだ。
大きな棚には使いかけのブラシクリーナーのボトルなどがたくさん並んでいる。
あまりに埃っぽいので、私は急いで窓を全開にし空気を循環させた。