きみの色
「やだっ…!」
「ほら、じっとして…」
森田の腕が近づき、動かないように両手を机に押さえつけられる。
物凄い力だ。
抵抗しようとしたが、私の体は恐怖と痛みですっかり動かなくなってしまっていた。
怖くて涙が出る。
泣けばいっそう喜ばしてしまうだろう。
泣いてたまるか。
そう思うのに、体が言うことを聞かない。
私の体は恐怖に支配され、頭は真っ白だ。
全身の力がどんどん抜けていき、近づいてくるその気味の悪い物体をただ追うことしかできなくなってしまった。
抵抗すれば殺されてしまうかもしれない。
呼吸を荒くした森田が、ひひっと変な笑い声をこぼす。
じっとりとした手が、全身、肩から腹、そして胸の方へと伸びていくのがわかった。
気持ち悪い!
気持ち悪い!
嫌だ!
心の中でそう叫んでも、口に出すことすらできない。
お願いやめて、と喉から搾り出すようにしていっても森田は動きをやめない。
顔を近づけ私の首元へと移動する。
ぼんやりとした視界で、モゾモゾと動く何かを感じながら蜘蛛の巣が張った天井に目をやる。
「いい香りだねぇ…」
ついに体の感覚がなくなり、今何をされているのかすらわからなくなってきた。
首元や顔を舌のような感触が、まるで蛇みたいに移動する。
加齢臭とクリーナーの臭いがまざって吐きそうだ。
ぎゅっと目閉じる。
いっそのこと、今このままここで死んでしまった方がマシだ。
「ひぎぃっ!」