きみの色

順々に、書いたものを前に貼り出してゆき、横にある机に背中を曲げて肘をついている担任がいくつかコメントしていく。


無愛想に曲がった口元のすきまから、淡々と
嫌味ったらしい言葉が吐き出された。


まあ、いつもこんな感じだ。


先生はきっと、私たちに興味がない。

わたしたちがどこへ行こうが、どんな絵を描こうが
この人にとってはどうでも良いのだろう。



人生かけて必死にやってる生徒もいるのにな。



「影の捉え方が、なんか全然なってないよねぇ…なんでかなあ」


なんでかなあ、と言われても。という顔で評価を受けてる男子が担任を見た。



「もっと、全体で捉えるべきかなあ。影を塗ろうとしてる感じが前に出てきすぎだね…」



言っていることは真っ当だ。

確かにそうかもしれない。

他人事のように呟いてるだけに聞こえるのが、気に触ってしまうのか。



「はい、次」



私の番が来て、慌てて前に行く。



先生は肘のついてない方の手で、くるくるとペンをいじっていた。

ギョロリとした目が机の上に載せてある評価表と、私を何度か行き来する。



「まあ、いいんじゃない。よく描けてると思うけど」



たった一言。


「はぁ」と私は返事をする。



「問題ないって感じだね。時間の使い方もできてそうだしね」



先ほどペースが遅いと口出ししてきたくせに。と、私は思った。



「…ありがとうございます。」
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