きみの色
服を脱いでもなお、体からはクリーナの香りがする。
鏡に当たった脇腹のところには、青黒いあざができていた。
熱いお湯をかぶると、冷え切った体がじんわりとあたたまって、強張っていた筋肉がほぐされていくみたいだった。
このまますべて洗い流されて
心の中で願いながら、何度も何度も、皮膚が痛くなるほど体を洗った。
脱衣所から出ると、おばあちゃんがあたたかいお茶を用意してくれていて、「飲みなさい」と渡してくれた。
そのまま柳に連れられ、2階の和室に案内される。
とても広い家だった。
古い日本家屋だけど、掃除が行き届いていて綺麗だ。
部屋がいくつもあり、2階に行くまでの廊下の外には小さな庭と縁側まである。
この家に2人で済んでいるのだろうか?
「ちょっと狭いけど」と案内された部屋は、十分過ぎるほど広かった。
丁寧に、布団までもうすでに用意されている。
「あなたの部屋?」
「いや、客間。俺の部屋は隣にある」
おばあちゃんが入れてくれたお茶を流し込む。
胃のところからポカポカと暖かさが広がっていく感覚が気持ちいい。
「ニャー」
可愛らしい鳴き声と共に障子の隙間から真っ黒い猫が部屋に滑り込んできた。
「猫?」
「あぁ、ウチで飼ってる かぼす」
「かぼす?…ふふ、可愛い名前」
カボスという名前の黒猫は、私と柳の間にやってきてゴロンと寝転びお腹をさらけ出して伸びをした。
柳が優しい手つきでかぼすのお腹を撫でる。