きみの色
「いやー、昨日はマジびっくりしてさ。急に佐百合がそっから飛んだんだぜ?」
そこ、と由井くんが昨日私がここを訪れた時に覗き込んだ窓を指差した。
下を除けば、準備室横のベランダが見えるあの窓だ。
そうだ。
あの時は混乱してわからなかったが、柳は急に現れて私を助けてくれた。
「ぴよーーんって、隣のビルに飛び移るもんだから焦って追いかけたら…って、ごめん。昨日のこと思い出したくないよな?」
申し訳なさそうにこちらを見た由井くんの頭を、バシッと蘭子さんが叩く。
「ごめんねぇ。気が利かなくて」
3人とも、私のことを気遣っているんだ。
なんだか申し訳ない気持ちになる。
「もう、大丈夫です。柳もいるし…こうやってみんなと話せて嬉しいです」
「困ったことがあったらなんでも頼りなねー…!野郎ばっかのうるさい店だけど。」
優しさに胸がジーンと熱くなる。
柳の周りは、いい人たちばかりだ。
「葉月、もう行こう」
あさひくんの横から、柳が呆れた顔で現れる。
そのまま彼に肩を抱かれて、ドアに連れて行かれる私を「え?」と由井くんとあさひくんが声を揃えて引き留めた。
「帰んの?いまからいろいろ話すってとこだったんだけど…」
「行くとこあるんだよ。離せ」
「おいおいそれはないって…まだ挨拶しかしてねぇだろ?」
柳と由井くん、2人の間にもみくちゃにされる私。
なんだかやりとりが面白くて笑ってしまう。