きみの色


柳がそんな顔することないのに…



彼の頬に触れて、その綺麗な肌を優しく撫でる。



「わかった。…この世で1番美しいあなたにお願いされたら、断れないもん」



からかうように言うと、柳は目を細めて笑った。

ベットに腰掛けている彼の膝の間にいた私の腰を、柳はぎゅっと抱きしめる。



腰を抱かれたまま、柳の頭をふわりと撫でる。

まるで猫の毛みたいに柔らかい。



「よし。じゃあ帰ろう?」



「…やだ、もう少し」



この顔から「やだ」という言葉が出てきて
びっくりしすぎて、私の体が思わず固まる。



体の内側の方から、むずむずとした感情が湧き上がってくる。



愛しさと、可愛いと思う気持ちがぐちゃぐちゃに混ざったみたいな…



普段は冷静で、無口で、淡々としているイメージの彼とは真反対のこの2文字に、どうしようもなくなってしまう。



あのルックスに、甘え上手なこの才能。

もしかしたら神様は、本当に人間へのいろいろな配分を間違えてしまったのかも。

彼1人に偏りすぎだ。




「…柳って、色々ずるいよね」




「なにが」とでも言いたげに、きょとんとした顔でこちらを見上げる彼。

相変わらずその顔面は、嫉妬してしまうほど美しい。



こんなに近くで彼の顔を拝める私も、ひょっとしたら恵まれているのかもしれない。


< 74 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop