きみの色


おばあちゃんに見送られながら柳の家を後にし、私は柳のスマホを届けるべく阿久津沢高校に向かうことにした。



学校がある場所は大体把握している。


この猛暑の中、歩いて向かうのは嫌だったので
バスで近くまで向かうことにした。




バスを降りてしばらく歩くと、煉瓦造りの巨大な校舎が見えてきた。



ここが阿久津沢?



門は大きく、とても立派だ。


それに校舎自体もとても綺麗な作りになっていて、それでいて新しい。


グラウンドに続く道も綺麗に整備されていたり、花壇や植木もちゃんと手入れされている。



門をくぐってしばらく歩き進めると、阿久津沢の制服をきた生徒が何人か歩いているのが見えた。



柳がいる定時コースの校舎はどれだろう?




ぐるぐると後者を彷徨って不審者みたいになっても嫌なので、思い切って生徒に尋ねてみることにした。



私が声をかけると笑顔で挨拶をし、快く対応してくれる。



「あの、人を探してるんですけど…定時コースってどこでしょうか?」



「定時コース?」




あれ…、私なにか間違ったことを言った?


相手の反応はきょとんとしていて、野田が言っていた情報が間違いなのではないかと不安になる。


横にいた栗色の髪をした少年に顔をじっと見られ、気まずい。



「定時ならここにはないよ。校舎が分かれてるんだ。向かいの道路を少し先に行ったところにあるけど…」



「あっち」と、方角を指さしで教えてくれる。



「ありがとうございます!」



「…君1人で行くの?…あぶないと思うけど…」



栗色の髪の少年が心配そうな表情でこちらを見た。



「いや…、大丈夫なはず…です!…では」



ちょっと!と後ろから呼び止められたが聞こえないふりをして、走ってそこから立ち去る。



そして、定時コースの校舎を訪れた時
彼らが私を心配してくれた意味を知った。



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