シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「何言ってるの? だって熱愛報道が出ているじゃない。モデルさんだっけ? 美男美女カップルでお似合いだと思うけど」
ギロッと睨んでくる大くんから、怒りの気配が感じられる。図星だったから言葉に詰まっているのだろうか。
「美羽は俺のこともう好きじゃないの?」
「十年も前の話……なんだから」
過去にしきれていないけれど、あえて強がってみせる。久しぶりに会って過去を鮮明に思い出し、大くんはいっときの迷いで告白してきたのかもしれない。
ライブの後でアドレナリンが出ているだろうし、打ち上げもあって精神状態が普通じゃないのかもしれない。そう、きっと酔っ払っているんだ。
「酔った勢いで言わないでよ。びっくりしちゃうじゃない」
リビングの明かりが差し込んでいる寝室。薄暗い部屋にベッドと男女が二人。このまま流れでそういう関係になるのはイヤ。
私はリビングに戻って元いたカーペットに座った。
ゆっくりと追いかけてきた大くんは、私の目の前に来てしゃがんだ。そして、手をぎゅっと掴んで大くんの左胸に手のひらを添えられた。
ドクン、ドクンと激しく動いている鼓動がわかる。昔よりも逞しくなっている胸板に触れた手のひらは、だんだんと熱くなって汗をかいてしまう。
「本気なんだけど。めちゃくちゃ心臓が暴れてるのわかるだろ?」
五十センチほどの近い距離で視線を合わせられると、私の思考は正しく動かなくなる。テレビでよく見ている綺麗な顔が目の前にあって、頭の中が整理できない。
私が大くんを好きとか嫌いとかの感情で分類する前に、芸能人としてのオーラがありすぎてめまいを起こしそうになる。
「芸能人……が、いる」
やっと絞り出せた言葉は、意味不明。
「は?」
十年ぶりのプライベートでの至近距離に、心と頭は大パニックを起こしてしまったのかもしれない。涙がポロポロ落ちてくる。
私もCOLORのコンサートでアドレナリンが過剰に出てしまったのかもしれない。明らかにテンションがおかしいと自分でも感じている。
「あのさ、俺は俺なんだけど……」
「ぅ、ううっ。無理っ。怖い」
「うーん……」
明らかに困った表情の大くんは、手をそっと離してくれた。
そして、親指で涙を拭ってくれる。優しい手つきにドキッとしてしまう。
「泣かないで」
甘い声で私をなだめるように言ってくれる。見つめた目の色は太陽のように温かい。
「……ごめんなさい」
「じゃあさ、友達からどう?」
「友達……?」
「時間ある時は会って食事したりしよう。それで距離を縮めていこうよ。俺も……色々と不安だし。あ、ちなみに熱愛報道は誤解だから。テレビや雑誌の言うことを鵜呑みにしないでくれない?」
「え……あ、うん」
大くんは私の隣にあぐらをかいて、クスクスと笑っている。
「誕生日がきて二十九歳になったんでしょ、美羽。スーツ着ている時はOLって感じで大人な女って思ったんだけど、プライベートで会うと美羽は昔のままだ。変わってなくて安心した」
柔らかい表情を見ていると涙が落ち着いて、冷静さを取り戻す。
大くんも昔と同じ。何も変わっていない。
ただ、芸能人として成功したオーラはすごい。本人は気がついていないだろうけど。
二人きりの空間。この空気感が懐かしくて、柔らかい気持ちになる。
ギロッと睨んでくる大くんから、怒りの気配が感じられる。図星だったから言葉に詰まっているのだろうか。
「美羽は俺のこともう好きじゃないの?」
「十年も前の話……なんだから」
過去にしきれていないけれど、あえて強がってみせる。久しぶりに会って過去を鮮明に思い出し、大くんはいっときの迷いで告白してきたのかもしれない。
ライブの後でアドレナリンが出ているだろうし、打ち上げもあって精神状態が普通じゃないのかもしれない。そう、きっと酔っ払っているんだ。
「酔った勢いで言わないでよ。びっくりしちゃうじゃない」
リビングの明かりが差し込んでいる寝室。薄暗い部屋にベッドと男女が二人。このまま流れでそういう関係になるのはイヤ。
私はリビングに戻って元いたカーペットに座った。
ゆっくりと追いかけてきた大くんは、私の目の前に来てしゃがんだ。そして、手をぎゅっと掴んで大くんの左胸に手のひらを添えられた。
ドクン、ドクンと激しく動いている鼓動がわかる。昔よりも逞しくなっている胸板に触れた手のひらは、だんだんと熱くなって汗をかいてしまう。
「本気なんだけど。めちゃくちゃ心臓が暴れてるのわかるだろ?」
五十センチほどの近い距離で視線を合わせられると、私の思考は正しく動かなくなる。テレビでよく見ている綺麗な顔が目の前にあって、頭の中が整理できない。
私が大くんを好きとか嫌いとかの感情で分類する前に、芸能人としてのオーラがありすぎてめまいを起こしそうになる。
「芸能人……が、いる」
やっと絞り出せた言葉は、意味不明。
「は?」
十年ぶりのプライベートでの至近距離に、心と頭は大パニックを起こしてしまったのかもしれない。涙がポロポロ落ちてくる。
私もCOLORのコンサートでアドレナリンが過剰に出てしまったのかもしれない。明らかにテンションがおかしいと自分でも感じている。
「あのさ、俺は俺なんだけど……」
「ぅ、ううっ。無理っ。怖い」
「うーん……」
明らかに困った表情の大くんは、手をそっと離してくれた。
そして、親指で涙を拭ってくれる。優しい手つきにドキッとしてしまう。
「泣かないで」
甘い声で私をなだめるように言ってくれる。見つめた目の色は太陽のように温かい。
「……ごめんなさい」
「じゃあさ、友達からどう?」
「友達……?」
「時間ある時は会って食事したりしよう。それで距離を縮めていこうよ。俺も……色々と不安だし。あ、ちなみに熱愛報道は誤解だから。テレビや雑誌の言うことを鵜呑みにしないでくれない?」
「え……あ、うん」
大くんは私の隣にあぐらをかいて、クスクスと笑っている。
「誕生日がきて二十九歳になったんでしょ、美羽。スーツ着ている時はOLって感じで大人な女って思ったんだけど、プライベートで会うと美羽は昔のままだ。変わってなくて安心した」
柔らかい表情を見ていると涙が落ち着いて、冷静さを取り戻す。
大くんも昔と同じ。何も変わっていない。
ただ、芸能人として成功したオーラはすごい。本人は気がついていないだろうけど。
二人きりの空間。この空気感が懐かしくて、柔らかい気持ちになる。