シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
玲に報告すると、すごく喜んでくれた。
いっぱい辛い思いをしたんだから、幸せになるんだよと言ってくれた。少しずつ明るい未来が待っている気がする。こんな風に思うのは、罪にならないよね……?



「なんか、最近綺麗になった?」
千奈津がランチ中に言ってきた。社員食堂は今日も混んでいたけど、窓際の席をゲットすることができた。
「そ、そうかな……」
定食の白身フライをサクッと音を立てて食べる。
十二月になり、街はクリスマスムードなのだけど、大くんはクリスマス特番の収録があってかなり忙しいらしい。

「彼氏ができたら教えてよね」
「あ、うん」
「まさか、杉野マネージャーじゃないよね?」
「ないよ。尊敬する上司止まりかな」

ハッキリした口調で言うと「尊敬されて上司として嬉しいよ」と噂をしていた杉野マネージャーが後ろから言ってきた。
たまたま話をしているタイミングでランチに来たらしい。聞かれてしまって恥ずかしく顔が熱くなる。
「あ、俺にも男ができたら教えろよ? 上司として助言してやる」

クスっと笑ってトレーを持ちながら去って行く杉野マネージャー。千奈津は「ウケるね」と笑っていた。
大くんともなかなかうまくやっているし、職場でも仕事や人間関係もいい感じだ。きっと、これからもいいことが続くって信じよう。
仕事に戻り合鍵のことを考えていた。

あまり料理は得意じゃないけど……手料理を作りに行こうかな。
今日は大くんが司会をやっている番組の収録があると言っていた。
帰りは二十三時過ぎるみたいだから、着替えを買って泊まっちゃおうかな。いきなりそんなことしたら大胆すぎる?
でも、なるべく離れたくないし、近くにいさせてほしい……。
仕事を終えると真っ直ぐデパートに行って、安くて会社に着ていけそうな服を買った。そして温かいものを食べてほしくて豚汁を作ることにした。

大くんのマンションへは初めて訪れる。携帯のナビで歩いて行くと高級そうなマンションばかりが建っているところにたどり着いた。背の高いマンションを見上げる。すごいところに住んでるんだなー……。なんか、来ちゃいけなかった気がしてくる。
でも、勇気を出して入ろうとした時、タクシーが止まった。
中から降りてきたのはなななななんと、宇多寧々さんだ。
大くんと噂になっている美人なモデルさん。もしかして、大くんに会いに来たのだろうか……。

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