シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
オドオドしてはいけないと思いつつ、その場から動けないでいると寧々さんが近づいてきた。


「あなた……」
意味深な声で言われた気がしたけど、気のせいだろう。
寧々さんは、私にまっすぐと視線を向けてくる。
「ここのマンションに用事があるの?」
私に話しかけている? 

ど、どうしよう。背中に汗が流れ出す……。大くん、どうしたらいいの?


「いえ、あの」
「不審者?」
「いえ、用事あります」
「……そう」

震える手でオートロックに鍵を差し込むと、自動ドアが開いた。そして、エレベーターに一緒に乗ってきた寧々さん。
違う階で降りたけど、怖かった。

心臓がまだバフバフ言っている。早く、大くんの部屋に入らなきゃ。

ドアの前に立ち玄関を開けると、自動的に電気がついた。それだけなのに、ビクッとしてしまう。
でも、足を踏み入れた瞬間、大くんの香りが鼻を通り抜けて幸せな気持ちに支配される。早く、帰って来てほしいな……。
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