シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない


朝、目を覚ますと大好きな大くんがいる。
お互いに傷ついて色んな過去があって、乗り越えて、今やっとこうして穏やかな時を過ごせている。ベッドから抜け出して窓から空を見上げるとチラチラと雪が降っているが、天気はいい。

――はな。ママは、大好きなあなたのパパと過ごせて幸せだよ。

会えない間に大くんは偉大な人になってしまって、私は不釣り合いなんじゃないかと今でも思ってしまうけど、もう離れないって決めたのだ。強くならなきゃ。
着替えを済ませ、メイクをした。
大くんはまだすやすや眠っているみたい。
このままずっと顔を見ていたいけど、遅刻してしまうから行かなきゃ。起こすのは可哀想だから、そのまま部屋を出て行った。
エレベーターに乗ると下の階で止まりドアが開くと、寧々さんが立っていた。彼女は私を見つめてしばらくその場で固まっていたから『開』ボタンを押して微笑みかけた。

「……ありがとう」
中に入ってきてドアが閉まると、寧々さんは振り向かずに小さな声で話しかけてくる。
「大樹の部屋に泊まったの?」
「え……」
「ハッキリ言いなさいよ!」
大きな声で怒鳴られて、振り向いた寧々さんは私を思い切り睨んだ。
手には握りこぶしがあり、プルプル震えている。
あっという間に一階に着いてドアが開くと「疫病神ね、あなた」と言われ颯爽と出て行った。
疫病神…………。
気にしちゃいけない。大くんを信じなきゃ。大くんは、私を愛してくれているんだから……。
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