シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「え、契約が無くなった?」
千奈津の声が響き渡った。
一月に撮影予定を組んでいたCOLORを起用したCMの話がまとまりつつあったのに、白紙になってしまったのだ。
大くんと会った次の日の夕方。
私と千奈津は杉野マネージャーに呼び出しをされていた。会議室にはもうすでに暗くて蛍光灯が光っている。
大くんとまた仕事ができるかもしれないと思っていたのに。……いや、それどころじゃない。我社にとって大きすぎるダメージだ。
「どうしてですか!」
千奈津は遅くまで会社に残って企画を練っていたから、大き過ぎるショックだろう。身を乗り出して聞いている千奈津。私だって同じ気持ちだ。
「……わからない。突然だったから。参ったな」
困った顔をして頭をかいている杉野マネージャー。次の案を練ってタレントを探してなんて、間に合わない。
「タレントは諦めて、アニメーションか何かで対応するしかないか……。気持ちを切り替えないといけないってわかっているんだけど、あんなにいい雰囲気だったのに。一体、何があったんだろうか」
――疫病神。
寧々さんの声が頭を過ぎった。私がこの企画に携わったからなのだろうか……。
その日は遅くなってしまい、大くんに連絡をしないまま眠ってしまった。