シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「あなた、あたしが誰だか、わかってるの?」
「宇多寧々さんです」
「そうよ。世間を動かすことができる女なの。大樹に近づかないで」
「……嫌です。大くんは、私を」
「契約が、ダメになったでしょ?」
私の言葉を遮るように質問してきた。
「え、」
「あれは、ほんの忠告みたいなものよ」
「…………」
こんな意地悪な人を大くんが好きになるはずがない。
「これ以上、大樹に近づいたらどうなるか教えてあげる」
ニヤリと笑って寧々さんは説明をはじめた。
「まずは、大樹の事務所の社長にあなたと会っていることを伝えるわ」
「えっ」
社長って、私が妊娠した時に一番反対していたあの人……だよね。
「きっと社長はあなたに会わせないようにするでしょうね。そして、あなたは過去に大樹の子供を妊娠していた事実を、あなたの会社の関係者に教えるの」
――なんで、妊娠していたことを知っているのだろう。
背中に嫌な汗が流れて、心臓がバフバフと言い始めた。