シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
お風呂場で愛されたあの日から大くんは連絡をくれない。
忙しいのかもしれないと思って私からも連絡を入れずにいた。残業をしながら、ふーっと息を吐く。もう一週間になるのだ。どうしちゃったんだろう。
会いに行きたいけど寧々さんに会ってしまうかもしれない。ちゃんと大くんに、話したいと思っているのに勇気が出なくて連絡できずにいる。
残業を終えて電車に乗ると、ホテルの広告が出ていた。もうすぐクリスマスだからホテルでディナーをと書かれている。
いいな……大くんと一緒に過ごせたら幸せだろうな。こんなに好きなのにどうして我慢しなきゃいけないのかな。
自分の家の前に着くと高級外車が停まっていた。
「今度は一体誰」
小さな声で呟いた私が近づいて行くと、窓が開かれた。
「美羽さん」
中から声をかけてきたのは、大澤さん――大くんの事務所社長だった。家まで調べられたのか。
「お久しぶりね」
「こんにちは」
「夜遅くにごめんなさい。少しお話できないかしら?」
「…………大樹さんのことですか?」
「ええ。寒いから乗って」
助手席に乗り込むと、大澤さんは相変わらず美しい。
少し年齢を重ねた感じはあるけれど、あまり変わっていなくて昔のままだった。
「十年かぁー。またあなたと大樹が再会するなんてね。驚いちゃったわ」
座り心地のいいシートは、さすが高級外車という感じだ。どこのメーカーかはわからないけれど……。車の中にはクラシックが流れている。