シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
事務所に到着して社長室に入るとメンバーと社長がいた。
ソファーに腰を下ろすと、社長は近づいてくる。
「大樹、お疲れ様」
もう時計は深夜を回ろうとしていた。今日話さなければいけないことなのだろうか。
俺の目の前に社長が座り、赤坂は社長のデスクによしかかってこちらを見ていて、黒柳は社長の隣に座っている。赤坂と黒柳のマネージャーはいなかったが、池村はドアの近くにまっすぐと立っていた。
「またあの子に会ってるのね。宇多さんから連絡が入ったの。これからも仕事を続けていきたいなら、会うのはやめなさい。過去のことは消し去りなさい」
「…………」
俺は唇を噛みしめる。
美羽のことは命をかけてでも守りたい。でも、美羽の心はどこにあるのだろう。
「あなたは芸能人なのよ。芸能人は結婚という大事な転換期をプラスに変えていく必要がある。COLORだってもういい大人よ。結婚や恋愛は反対する時じゃないと思っているわ。しかし相手が問題なの」
「社長には感謝してます。無名だった俺らをここまで育ててくださった恩人だ。でも、ビジネスのために結婚や恋愛する相手を選ぶのは賛同できません」
「宇多さんは業界でも力がある人なの。その娘に好かれているってどういうことかわかってるの?」
社長はイライラし始めてタバコに火をつけた。
ふーっと煙を吸って気持ちを落ち着かせている。