シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

「どちらかと言うと俺が惚れ込んでるんです。俺にはアイツしかいない」

真剣な一言に社長室はシーンとなる。そして、黒柳がゆっくりと口を開く。
「大樹がそんなに必死になるなんてな。笑える。解散はしたくない。だから、大樹があの子を選ぶなら俺と赤坂は応援するしかないと思う」

その言葉に驚いて黒柳を見ると、不安そうだけど優しい目をしていた。

「俺らだって人間だし、一般人の子を好きになることもあるから……」
「まあな」

赤坂が言うと社長は眉尻を下げた。

「あなた達が結束すると……強いのよね」
「ただ……美羽は俺のことをどう思っているかわからないから……」
「どうして、そんなこと思うの?」


俺の次の言葉に皆の視線が集まる。
「美羽と別れてから……男として機能しないんです」
正直に告げると皆、息を飲んだようだ。
隠す必要は何もない。素直に打ち明けて逆にスッキリした。
「そうだったの……」
社長は深刻そうな顔をして立ち上がって窓際まで歩いて行く。
「俺はそれでも一緒にいたいけど、美羽は年齢的なことも考えて子供を作れる人と結婚したいと思っているかもしれない。そうだったとしたら、俺は一生独身でいるつもりです」

自分の意志は固い。
誰に何を言われようが気持ちは曲げないつもりでいる。
「地位を手に入れた代わりに、深い傷を負ってしまったのね」
社長の悲しそうな声が耳に届いた。池村はうつむきがちに黙って立っている。
「遅くまでお疲れ様。また話し合いをしましょう」
< 126 / 291 >

この作品をシェア

pagetop