シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
次の日も朝から収録があって家に戻ったのは深夜一時過ぎだった。
部屋に入ってビールを流し込んだところでチャイムが鳴る。

美羽が来たのかと思ってインターホンを覗くと寧々が立っていた。
ドアを開けてやると中にズカズカ入ってくる。俺と美羽のことをおかしくかき乱しているのは、間違いなく寧々だろう。
ソファーに座った寧々は一段と機嫌が悪そうだ。

「大樹はさ、誰の力で今の地位を確率したと思ってるの?」
「単刀直入に言えば?」

コーヒーを出してあげると、寧々は大きなわざとらしいため息をつく。

「あたしのパパがCOLORを番組に使ったから、知名度が上がってきたんでしょ?」
「色んな人の協力があって今があるのはたしかなこと。感謝してるよ」
「じゃあ、あたしと結婚して! あたしは大樹のことが大好きなのっ!」


立ち上がって俺に抱きついてきた寧々を、引き剥がす。
今までも思わせぶりな態度は一度もしたことがなかったのに、どうしてこんなに俺に執着するのかわからない。


「俺は寧々をそういう対象に見てない」
寧々をじっと見つめて少しきつい口調で言うと、涙目で睨んできた。

「どうして振り向いてくれないの? あたしの何が悪いの?」
「寧々が悪いんじゃなくて、俺は美羽を愛してるんだ。他の女性を好きになるなんて考えられない。理解してくれ」
諭すように語りかけるが、寧々は息を荒くして顔を真っ赤にして怒りまくっている。

「ありえない。もう、絶対に許さないんだからっ!」
そして、俺の部屋を出て行った。美羽に災難が襲いかかるかもしれない。だけど、絶対に守り切ってみせる。
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