シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

第四章

今日はクリスマス。
大くんは生放送があって遅くなるみたいだけど、夜を一緒に過ごすことにしていた。
クリスマスらしいものを買ってお邪魔しようと思っている。

「一緒に暮らそう」

そう言ってくれたのだけど、ちゃんと私の両親に挨拶を済ませてから同棲をすることにした。

「千奈津はデートなの?」
「もちろんよ」

化粧室で入念に化粧をしている姿を見て心が温かくなった。
私も、今日は大好きな人に会える。
そう思うと嬉しくてつい顔が緩んでしまうけど、誰にも言えない恋愛だ。

「楽しんでね」
「美羽は? デートの予定とかないの?」
「あぁ、うん。ケーキくらいは食べようかな」
「本当? 最近すごく綺麗になったから彼氏ができたのかと思うんだけど。今度ゆっくり聞かせてね。お疲れ様」

颯爽と去って行く千奈津を見送る。言えなくてごめんね。
私も軽く化粧を直した。会社から出ると寒くてブルっと震える。ベージュのマフラーで鼻の下まで隠す。そして手を擦り合わせた。
小さなケーキと生ハムのサラダとチキンを購入した。
クリスマスのイルミネーションがキラキラしていて綺麗。飲み物は必要ない。大くんは芸能界の仕事をしているからか、ワインなどをプレゼントされることが多いみたいだ。
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