シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
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年末年始休暇を終えて会社に行き仕事をしていた。
婚約したことを玲に伝えるとすごく喜んでくれた。玲もコーくんと結婚しようかという話になっているらしい。
まだ大くんと同棲はしていないけど、頻繁に会いに行っている。
ランチの時お手洗いに行くと女子社員が化粧を直しているところだった。私も鏡を出してリップを塗り直していると、チラチラと見られている気がした。
――なんだろう。
廊下に出て行った二人組の女子社員の「あの子だよね」なんて言った声が聞こえてきた。私のことを噂している気がする。何かやらかしてしまっただろうか。でも関わりのない人に噂されて気持ちが悪い……。
なんとなく気持ち悪い気分で過ごしていた。そう言えばランチ中も千奈津が何か言いたそうな顔をしていたけど、関連があるのだろうか。
就業時間を終えると人がいなくなっていく。
残業しているのは、千奈津と私と杉野マネージャーの三人だけしか残っていなかった。
「美羽」
千奈津に声をかけられた。
「ん?」
「美羽ってさ芸能界の人と付き合ってたこと、あるの?」
カタカタとキーボードを打っていた手を止めてしまう。
どうしてそんなこと聞いてくる?
視線をゆっくり上げると杉野マネージャーと目が合った。
「ど、どうして?」
冷静を装いつつ千奈津を見る。
「なんか、マスコミみたいな人が聞き込みをしているようだよ」
「聞き込み?」
「甘藤の社員と大物スターの過去にあった出来事と言うか、過去の恋愛事情を調べているらしい。で、なぜか美羽の名前で調べているみたいよ」
そういうことだったのか。だからランチの時お手洗いにいた社員も噂をしていたのかもしれない。マスコミって本当によく調べていてすごい。ある意味怖いとさえ思ってしまった。
「でもねー。まさか、美羽がそんなのありえないよね。どうしてそんな変な噂が流れたんだろうね」
明るい声で言った千奈津は「さー仕事、仕事」と再びキーボードをタイピングし始めた。私も画面を見つめるけど力が入らない……。
過去を隠して生きていくなんて辛い。
悪いことは一切していないのだから堂々と生きていきたいと思うのに、言えない。
もしも、私が言ってしまえば大くんに迷惑をかけてしまう。大好きな人を悲しませたくない――……。
杉野マネージャーは何も知らないふりをしてくれた。
千奈津……言えなくてごめんね。
年末年始休暇を終えて会社に行き仕事をしていた。
婚約したことを玲に伝えるとすごく喜んでくれた。玲もコーくんと結婚しようかという話になっているらしい。
まだ大くんと同棲はしていないけど、頻繁に会いに行っている。
ランチの時お手洗いに行くと女子社員が化粧を直しているところだった。私も鏡を出してリップを塗り直していると、チラチラと見られている気がした。
――なんだろう。
廊下に出て行った二人組の女子社員の「あの子だよね」なんて言った声が聞こえてきた。私のことを噂している気がする。何かやらかしてしまっただろうか。でも関わりのない人に噂されて気持ちが悪い……。
なんとなく気持ち悪い気分で過ごしていた。そう言えばランチ中も千奈津が何か言いたそうな顔をしていたけど、関連があるのだろうか。
就業時間を終えると人がいなくなっていく。
残業しているのは、千奈津と私と杉野マネージャーの三人だけしか残っていなかった。
「美羽」
千奈津に声をかけられた。
「ん?」
「美羽ってさ芸能界の人と付き合ってたこと、あるの?」
カタカタとキーボードを打っていた手を止めてしまう。
どうしてそんなこと聞いてくる?
視線をゆっくり上げると杉野マネージャーと目が合った。
「ど、どうして?」
冷静を装いつつ千奈津を見る。
「なんか、マスコミみたいな人が聞き込みをしているようだよ」
「聞き込み?」
「甘藤の社員と大物スターの過去にあった出来事と言うか、過去の恋愛事情を調べているらしい。で、なぜか美羽の名前で調べているみたいよ」
そういうことだったのか。だからランチの時お手洗いにいた社員も噂をしていたのかもしれない。マスコミって本当によく調べていてすごい。ある意味怖いとさえ思ってしまった。
「でもねー。まさか、美羽がそんなのありえないよね。どうしてそんな変な噂が流れたんだろうね」
明るい声で言った千奈津は「さー仕事、仕事」と再びキーボードをタイピングし始めた。私も画面を見つめるけど力が入らない……。
過去を隠して生きていくなんて辛い。
悪いことは一切していないのだから堂々と生きていきたいと思うのに、言えない。
もしも、私が言ってしまえば大くんに迷惑をかけてしまう。大好きな人を悲しませたくない――……。
杉野マネージャーは何も知らないふりをしてくれた。
千奈津……言えなくてごめんね。