シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「当時は売り出し中だったから、自ら会わない道を選んだの。彼の才能を潰しちゃいけないと思ってね。なのに……十年ぶりに再会したの」
「リッチマンゴープリンでね?」
コクリと頷いて言葉を続ける私。
「封印した過去だったのに、運命のいたずらかと思った。お互いに忘れようと思っていたのに無理だった」
「そうだったのね」と噛みしめるように頷いた千奈津。
「で、初瀬がこうやって苦しんでいるのに紫藤さんは動いてくれないのか?」
杉野マネージャーは、こういう時も心配してくれる本当に優しい上司だ。
「ちゃんと話そうと思っています。ご迷惑かけて申し訳ありません」
「そのほうがいい。早く相談して健やかに毎日を過ごせるのが一番だと思うぞ」
「はい」
「そうだよ。美羽は悪くないんだから」
二人に打ち明けることができて少し気持ちが落ち着いた。