シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
地味で存在感を消した格好をしたおかげでコンサート会場までバレずにたどり着けた。
ひと安心して関係者席に座っていると、大くんの事務所社長が来て、私の隣の席に座る。
「美羽さん。今後の大樹の人生を頼むわね。もしかしたら全く売れなくなるかもしれないけど、どんな時も支えてあげてほしいの」
「わかりました」
今までは目の敵にされていたけど、今日はすごく優しい目をしている。
「事務所としても大きな決断よ。でも、紫藤大樹の持っているタレント力を信じることにする。あの子が私の夢を叶えてくれた人だから」
「……夢、ですか?」
「芸能事務所を作って世の中にタレントを送り出して、人々がエンターテイメントを楽しむお手伝いをしたい。……これが、夢だったの。事務所が成功したのはCOLORのメンバーのおかげなのよ。だから、今度は彼らの夢を叶えてあげたいの」
ライブ会場であるドームには、ほとんどお客さんが埋まっていた。