シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「ただいまー」
仕事を終えた私は大くんのマンションに帰って来た。
三月初めから同棲している。
慣れない料理をクッ○パッドで検索しなんとか調理する毎日。インターネットさまさまだ。
今日、もらった花束を花瓶に入れようと準備していると……、下に落として割ってしまった。
「ど、どうしよう!」
あたふたしていると、テレビには大くんが映っている。
あ、大くんっ。目をハートにして見ていると……
「おい、危ないだろう」
呆れた声が後ろから聞こえて、驚いて振り向くと大くんが立っていた。
「お、お帰り」
「テレビの俺に夢中になって後ろにいる俺に気がつかないって……」
苦笑いされて恥ずかしくなってくる。
しゃがんで片付けようと手を伸ばすと「触るな」と怒鳴られる。
「危ないから俺がやるから」
手際よく片付けてくれる。
結局、二人で料理をして夕食を食べていると、寧々さんが乱入してきた。
たまに現れて夕食を一緒に食べている。
でも、本当に大くんのことは諦めてくれたみたいで今は友達として接してくれているから、安心だ。
「今日も二人から声をかけられちゃって。もう、イケメンとか見飽きたから私も一般人と付き合っちゃおうかな。美羽ちゃんみたいな地味な感じのサラリーマンとか。あ、美羽ちゃん、誰か紹介してよ」
「地味って言うな。美羽は素朴で可愛いんだから」
地味、素朴……うーん、なんか、微妙な気持ち。
「あーあ。なんか愛されたいなぁー」
こんなに綺麗だからすぐに見つかりそうな気がするのに、運命の人ってなかなか出会えないものなのかもね。
寧々さんはお腹いっぱいになって話したいことを話すと、帰っていく。
自由人である意味羨ましい。
寧々さんを見送りリビングに戻った。
ソファーに座っている大くんに後ろから抱きつく。
「なーに、美羽」
チョコレートのように甘い声で言って上を向いた大くんに引き寄せられてキスをする。
唇が逆さまなキス。
私の愛を全て受け入れてくれる。そんな大くんを大好きで、たまらない。
「こっち、おいで」
「うん」
大くんの隣に座ろうとしたら、大くんは自分の太ももをポンポンと叩く。
「美羽から誘ってくれるなんて嬉しいかぎりだ」
「誘ってるんじゃなくて」
楽しそうに笑っている顔を見ると幸せな気持ちが胸いっぱいに広がってきた。
夫婦になったらまた色々な難があるかもしれないけれど、 苦しいことを乗り越えて結ばれた私たちならきっと大丈夫。
そう信じて 私は愛する彼を支える覚悟をした。
完