シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
仕事を終えた私はスーパーへ寄って帰る。今日は何を作ろうかな。リクエスト通りお魚を買った。あとは……どうしようかな。ポテトサラダでも作ろうかな。味噌汁はどうしようかな。
私よりも大くんの方が料理は出来ると思う。
いつも、イマイチな料理を食べてくれるから申し訳ないなぁと、思っていた。
家に戻って料理を終えてテレビをつけると、大くんの番組がやっていた。
楽しそうに女性のタレントさんと社交ダンスをしている。
あんなに体ピッタリくっつけてやらしいっ。
うー……私の大くんなのに。
仕事だと分かっているけど嫌な気持ちになる。
こんなんでヤキモチを焼いていたら身がもたない。私って意外に独占に欲が強いのかな。
見ていられなくなって、テレビのチャンネルを変えた。
しばらくして大くんが帰って来た。玄関まで迎えに行く。
「お帰りなさい、大くん」
「ただいま」
頭をポンポンと撫でてリビングに向かって歩いた。
ちょっと疲れているようで心配。今日もハードスケジュールだったのかもしれない。
「大くんのリクエスト通りお魚焼いたよ。焦げているところもあるけど、なかなか美味しそうだよ」
明るい声で話しかける。
大くんは「ありがとう」と言って食卓テーブルについた。早速料理を並べる。
大くんと出会った頃はカレーライスすら作れなかったのに、インターネットのお陰でなんとか作れるようにはなったかな。
私も席につくと二人で手を合わせた。
「いただきます」
なんとなくいつもと雰囲気が違う気がした。大くんはよほどのことがないと感情を出さない。嫌なこととかあったのかな。
何か会話を見つけなきゃと思って考えていると、大くんから会話を振ってくれた。
「仕事、慣れた?」
「うんっ。皆さん優しいし親切にしてくれるからやりやすいよ。黒柳さんが時折私と大くんの関係を言っちゃいそうでハラハラしてるけどね」
くすっと笑って話をする。
「あいつマイペースだからな」
「大くんがライブで結婚するって言ってくれたでしょ? でも、世間には私の顔は知られていないからさ。まさか、私が大くんの奥さんになるなんて知ったら、信じられない人もいっぱいいるだろうね」
自分でもまだ信じられない時がある。でも、一緒に住むようになって少しは実感が湧いてきた。
「……入籍日なんだけど、十一月三日でOKもらったから」
「本当? 嬉しい」
ニコッと微笑むと大くんも微笑み返してくれる。
「結婚式は親しい人だけでやらないか?」
「そうだね。あまりいると疲れちゃうし。玲と千奈津は呼びたいな。小桃さんも!」
「ああ、いいよ」
「髪の毛……伸ばしたほうがいいかな。色んな髪型出来るし」
髪の毛と口に出した途端、大くんは険しい表情になった。何か言ってはイケないワードを言っただろうか。
「ごちそうさまでした」
「あ、うん」
立ち上がって食器をさげると、歯を磨きに行ってしまった大くん。
どうしちゃったんだろう。
気に触ること言ったかな。