シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない


今日は事務所に所属しているタレントさんや、働いているスタッフが集まって飲み会が開かれていた。
大会議室でオードブルが広げられていて缶ビールを片手に雑談をしている。
「美羽さん、お疲れ様」
「お疲れ様です」
声をかけて回っている大澤社長は、私のところへも話しかけに来てくれた。
「仲良くやってる?」
「はい、お陰様で」
「そう。楽しく仲良くね」
そう言ってまた次の人のところへ行ってしまう。テレビで活躍されているタレントさんがいっぱいいて、まるでテレビの中に入ったような気持ちになった。
若いタレントさんが近づいてきたのでお酌をする。今売れ始めているイケメン俳優だ。
「ありがと」
「いえ」
ニヤリとして顔を近づけてきた。
「お姉さん……見たことない顔だな。最近、入ったの?」
「……はい」
「へぇ。色が白くて美人だね」
「ありがとうございます」
いかにも軽そうな雰囲気で、対応に困っていると、大くんがさり気なく近づいてきた。
若手俳優は「おはようございます」と礼儀正しく挨拶すると、大くんは「おはよう」と言って微笑んだ。
「話している最中悪いけど、彼女のこと借りるね」
大くんは私の手を引いて若手俳優から引き離した。
そして、廊下へと連れて行かれる。
「美羽、この業界は色んな人がいるから気をつけろよ」
「べつに話しかけられただけだよ」
おでこをツンと人差し指で突かれた。
「危機感が少なすぎるんだって。あいつ美羽のことそういう目で見てただろ。気をつけろよ」
「ごめんなさい」
見つめ合っていると「お熱いこと」と声が聞こえて驚いて見ると、黒柳さんが壁に背をつけて腕を組みつつ見ている。
それでも、大くんは平然としていた。
「黒柳もそろそろ結婚してあげなよ。彼女もお年頃だろ?」
その口ぶりから大くんは、黒柳さんが付き合っている人を知っているようだ。誰にも言うなと言っているはずなのにメンバーは知ってるのかな。
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