シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

「大樹……。俺と芽衣子が付き合っているって教えたの?」
「いや」
「そう」
呟いた黒柳さんは、私を見つめた。
「そういうことなんだ。でも、誰にも言わないでね」
私はとりあえずコクリと頷いたが、芽衣子さんの気持ちも聞いてしまっていたので複雑だった。
「……どうして、誰にも言わないんですか?」
「触れられたくないから。……ま、大事だってことだよ」
黒柳さんは、芽衣子さんのことが好きなんだ。二人が両想いだと知って少し安心した。きっとうまくいくよね。
「大樹は言わないのか? 事務所の人間に」
「……言おうと思う。社長は美羽が大変だから言うなって言うけど、もう限界。俺の美羽に手を出そうとする奴が多い」
「ははは」
気怠そうに笑った黒柳さん。
「独占欲が強いな、大樹」
「お前が野放しにしすぎなんじゃない?」
くすくす笑い合っている二人。仲が良いのがうかがえた。そこに赤坂さんまで登場する。赤坂さんは見るからに俺様オーラを放っている。
「頑張ってるんだってね、赤坂」
黒柳さんがやんわりした声で言うと赤坂さんは鼻で笑う。
「まあな。お前らみたいに余裕があるわけじゃねぇーから」
COLORが揃って目の前で話していると迫力がある。やっぱり、大くんって凄い人なんだと実感した。
「大樹がさ、美羽ちゃんが他の男に狙われるのが嫌だからついに皆にバラすらしいよ」
面白がってクスって笑いながら言った黒柳さん。赤坂さんは唇を片方だけ上げて笑う。
「いいじゃん。どーせなら、今言っちゃえよ」
革のパンツのポケットに手を入れて話している赤坂さん。俺様発言連発に私はきょとんとしてしまった。
それなのに……。
「それ、いいかも」
賛同してしまったのだ。
そう言って、大くんは私の手を引いて中へ入って行った。
「話があります」
大くんがマイクで言うと静まり返る。
「俺がライブで結婚宣言した女性は、こちらにいる美羽です」
堂々と言うと目を丸くしている皆さん。一気に注目を浴びて顔が熱くなってしまった。
大澤社長は笑っている。
「大樹ったら、もう。困った子」
それからはもみくちゃにされて質問の嵐に対応するのが、大変だった。

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