シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「美羽。弁当食べようと思ってたのか?」
テーブルに置きっぱなしだった弁当。それを見ながら大くんは問いかけてくる。
「……たまにはね」
「やっぱり、美羽を一人にしておけないな。ジャンクフードとかばっかり食べて体悪くしそうじゃん。俺が側にいないとね。美羽には俺が必要だな」
そう言って後ろから抱きしめてくる。
少しアルコールも入っているみたい。
友達って誰なの?
聞きたいけど聞けない。いちいち束縛していたら、嫌な女だと思われそうだし。結婚するんだからもう少し自信を持つべきだと思う。
「大くん、お風呂どーぞ」
「うん。美羽、疲れているならあまり無理するんじゃないぞ」
「ありがとう」
「じゃあ、風呂入ってくる」
リビングから出て行った大くん。私は、はぁと溜息をついてソファーに座る。無造作に置かれた携帯電話。最新の機種ですごく薄い。
中身をみたい衝動に駆られる。けど、そんなことはしたくない。
婚約者であってもプライバシーは必要だと思うから。
そう思いつつ真っ暗な画面を見ていると急に光った。
無料通話アプリが作動し画面にメッセージが書かれていた。
『紗代:今日はありがとう。また会いたい』
短い文面だったためかすべて読めてしまった。画面はすぐに暗くなる。
……紗代って誰?
二人きりだったわけじゃないよね。ありえない。大くんを信じよう。
立ち上がって弁当を冷蔵庫に入れる。食べる気が湧かずミネラルウォーターをグラスに注いで飲んだ。
そこにバスルームから戻ってきた大くんが頭を拭きながら近づいてくる。
「俺にも一口頂戴」
ニコッと笑って私の手からグラスを抜き取った。そして喉を鳴らして美味しそうに飲んでいる。
もやもやしている気持ちが嫌だったから、意を決して質問しようと思った。声が震えないように冷静を装って質問を投げかける。
大くんはミネラルウォーターをおかわりしようと冷蔵庫から取り出して、グラスに注いだ。
< 190 / 291 >

この作品をシェア

pagetop