シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「……今日って、何人集まったの?」
さり気なく、普段の会話のように話しかける。
二人以上であれば安心できるし、勘違いをしたままでいたくない。
水を飲み終えた大くんは平然と答えた。
「二人だよ」
「大くんと、あと二人の友達が来たの?」
「いや、俺ともう一人」
……二人きりだったってことだ。
さーっと血の気が引いていくような感覚に襲われた。これ以上質問を重ねてもいいのだろうか。もっと悲しい気持ちになるかもしれない。それなら聞かない方がいいんじゃないか。
「そう。楽しかった?」
私は嘘の笑顔を作りながら会話を続ける。
「うーん。どちらかと言うと話を聞いていたって感じだからな。定期的に話を聞いてやらないと爆発しちゃうみたいでさ。困ったやつだよな」
ずいぶん仲の良い友達で、付き合いが長いようだ。
私の知らない大くんを知っている人なのかもしれない。
大くんはソファーに座って携帯を手に取った。さっき届いたメッセージを読んでいるようだ。すぐに返事をしている。
大くんはマメな性格だから深い意味はないと思うけど……女の人に返事を書いていると思うと、胸の奥底から嫌なものが沸き上がってくる。
「お風呂入ってくるね。大くん、疲れてるだろうから、先に寝ていていいからね」
目を合わせることもできずにバスルームに逃げ込んだ。
気持ちを落ち着かせるように熱いシャワーを思いっきりかけた。
「……紗代って誰なのよ……」
そして、私はもう一度ため息をついた。
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