シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
朝、目が覚めると大くんは隣にいなかった。ぼうっとする頭に声が聞こえてくる。
「紗代が決めることだと思うぞ。……ああ、うん」
――紗代。
その名前が耳に入ってきて私は目に涙が滲んできた。
やだ。
他の女の人と、馴れ馴れしくしないでほしい。
朝から電話をしてくるなんて非常識だ。
沢山のファンがいる大くん。それは応援してくださっているからと受け止めているけれど、プライベートで仲良くしている女性とは話が違う。
タオルケットをぎゅっと握って悔しさを押し殺す。
……大くんが他の女性に気を取られているかもしれない。どうしよう……。私と結婚するのを今更迷っているのだろうか。
「今晩は無理だって。仕事も忙しいし」
奪われたくない。
そう思ってベッドから出ると、私は大くんの元へ行った。
「…………」
無言で大くんを見つめると、困った表情をして私を片手で抱きしめた。だけど、電話はまだ続けている。
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