シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

「もう、時間ないから切るぞ。とりあえずまた連絡するから」
『待って大樹!』
電話から聞こえてきた声は可愛らしい女性の声だった。
しかも、呼び捨てにしているなんて。ありえない。
私は大くんの胸をぐいっと押して離れた。
「ごめん。切るね」と言って大くんは電話を切った。そして、私の方に近くに寄ってくる。
壁に追いやられ、私の顔の隣に両手をついてじっと見つめられた。
「おはよう。起きたんだね、美羽」
「…………」
大くんから目を背ける。空いた方の手で顎を持たれ視線を合わせられた。
「どうして俺から逃げようとしたの?」
「そんなつもりじゃない。……もういい」
「何がいいの?」
ちょっと怒った顔をされて、思わず泣きそうになる。大くんは私に隠し事をしているのに、どうして堂々としているのだろう。
「はっきり言えよ。何か言いたいことがあるんだろ?」
強い口調で煽られて私はつい口を開いてしまった。
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