シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

「……昨日、友達って誰……なの?」
声を振り絞るように問いかける。大くんは顔色を変えずに「友達」と言う。
「……女の人なの?」
「うん」
「女の人と二人きりだったの?」
「うん」
平然と言われてそれ以上何も聞けなくなった。間違っていることは何もしていないという態度だ。
「……そうなんだ」
「隠すことないから言うよ。高校時代に付き合ってた子」
「え?」
――元カノ?
別れた人と友達関係になることは、普通のことなのだろうか。
大くんは壁から手を離して直立で私を見た。
「俺のこと信じられない?」
「そんなんじゃないけど」
理解できない。私を置いて元カノと二人で会うなんて。しかも、香水の匂いをさせて。ヒドイ。
思わず大くんを睨んでしまう。
「なに?」と大くんは怪訝な顔をした。
「……ちょっと考えさせて」
「何を?」
「私には過去にお付き合いしていた人がいないの。だから、別れても友達だなんて意味がわからない」
時計を気にしている大くん。もうそろそろ行かないと遅れてしまうのだろう。
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