シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

「また夜話そう」
そう言って家を出て行った。
一人になってしまった部屋。
静まり返っていて悲しい気持ちになる。私はなんで嫉妬深い発言をしてしまったのだろう。
付き合って、別れて……と言う経験がある人はどうなんだろうか。
自分がスタンダードじゃないのは、わかっている。
でも、考えてもやっぱり別れた人と友達になるなんて理解できない。
玲か千奈津に聞いてみようか。
昼が過ぎ夕方になって大くんが帰って来る時間が近づいてくると、そわそわしてしまった。
夕食の準備を終えると、ソファーに座り携帯を持った。
大くんと顔を合わせるのが気まずくて玲に会えないかメールをするもダメだった。千奈津も予定があった。
――大くんに会いたくない。
八時になり私は頭を冷やしたいと思って外に出た。と言っても、外は蒸し暑くて汗が出てくる。しばらく歩いて携帯電話を家に置いてきたことを思い出した。
「連絡出来ないや……。今、何時なんだろう……」
長い時間歩いた気がする。
それでも帰る気になれずに歩き続けた。
すると、一台の高級車が止まった。窓が降りて声をかけられる。
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