シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「散らかってるけど、どーぞ」
1LDKの部屋はたしかに少し散らかっていた。お掃除してくれる彼女とかいないのだろうか。黒いソファーに腰を下ろす。
冷たいお茶を出してくれた赤坂さん。
「俺、ビール飲むけどいい?」
「どうぞ」
「送っていけないから帰りはタクシーで帰れよ」
私の目の前に腰を下ろしてあぐらをかいた。
「で、どうした?」
「実は大くん……元カノと二人で会っているそうなんです。友達だと言っているんですが、私は別れた人と友達になるなんて理解できなくて」
ふんっと鼻で笑う赤坂さん。ビールを一気に飲み干す。
「まあ、俺も美羽ちゃんと同じ考えだけど。大樹は別れた人とも友達になれるんじゃねぇーの?」
「そうなんですけどね。二人きりはやめてほしい……」
「ずいぶんハッピーな悩みだな。笑わせんじゃねぇ―って」
自分では一生懸命悩んでいるつもりなのに他人にはくだらないことに思えるらしい。恥ずかしくなってうつむく。
「悪い。きつかったか?」
「いいえ。その通りだと思います」
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