シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

立ち上がって二本目のビールを開けた赤坂さんは、呟くように自分の話をはじめてくれた。
「美羽ちゃんは好きな人と一緒にいられる。それってすげぇ幸せなことなんだぜ。俺はなかなか会えないから……」
「彼女さんは……?」
「アメリカ。正確には彼女じゃない。俺が惚れているだけで、あいつはどう思ってんのか不明なんだよね」
よほど素敵な人なんだろうな。女優さんとかなのかな。ハリウッドとかで活躍しているとか?
「大樹は正直に元カノだと言ったなら、怪しい関係ではないんじゃないか?」
「……はい」
「逃げないでちゃんと話し合う必要があると思うぞ」
「……はい」
赤坂さんが言ってくれた言葉を噛みしめる。大くんが何を話すかわからないけれど、怖がってはいけない。
「俺の好きな人、心臓病なんだ。移植でアメリカにいるわけ。……元気になって戻ってきてくれたら俺の女になってくれって言うつもりだけど。早く……会いてぇな」
切ない顔。寂しそうな声。
赤坂さんに比べたら私なんて幸せなのかもしれない。
デスク周りには心臓病に関する書物が置いてある。彼女を思って色々勉強したのかもしれない。
どこで知り合ったのかな。
「七歳も年下でさ。あいつは俺のことお兄ちゃんとしか思ってないかもしれないけど」
くすっと笑って赤坂さんは携帯を持った。
「とりあえず。大樹が心配するから連絡入れるからな」
「わかりました」

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