シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
料理を食べ終えて満腹の私と大くん。
温泉でも入ろうかと二人でくつろいでいた。
テーブルに置いてあるお茶を飲んでいる。
すると、大くんは立ち上がって何かを持ってきた。
「美羽。そろそろ準備しておいたほうがいいと思って」
封筒から出された薄っぺらい紙を広げ、私の目の前に置いた。婚姻届だ。
初めて見る婚姻届に心臓がドキドキと動き始めた。これに記入をして提出すると夫婦になるのだ。大くんと私が家族になるのだと思うと、目に涙が浮かんできた。
「ど、どうしたんだよ」
「……なんか感慨深い」
「は?」
「色々あったじゃない? 好きでたまらなかったのに別れてさ。忘れようと思って頑張ってたのに、忘れられなくて。再会したらで大くんは私を恨んでたりして。私は『はな』のことが言えなくてさ。なのに、そんな二人が結婚だなんてミラクルだと思わない?」
私の隣に座った大くんは、優しい笑顔を向けて微笑んでくれた。
そして、涙を親指で拭いてくれる。
「ああ、長かった。ほんっとに」
そう言って大くんはくすりと笑う。
「俺は、出会った頃から美羽のことが好きだった。どんどんのめり込んでいく自分に歯止めがかからなくて、一日も早く美羽がほしかった。会えない間も美羽のことばかり考えていたよ。美羽……めっちゃ愛してる」
唇が重なった。
大くんの甘くて包み込んでくれるキスが大好き。
お互いに手を伸ばして抱きしめ合う。
そして、もっと唇を強く押し付けて、舌を絡めた。
キスしたまま畳に押し倒される。
足の間を割って体を密着させてくる大くん。
熱い吐息が耳に届いて、胸が疼く。
シャツのボタンを一つずつ外されて袖から腕を抜くと、肩に吸い付いてきた。
くすぐったくて大くんを睨む。
「いやん、もう」
もちろん、本気で睨んでいるわけじゃない。照れ隠しもあったりする。
私の心なんてお見通しで、ニコリと笑った大くん。
そのままキャミソールも脱がされた。
そして胸の谷間に顔を埋める。……と言っても豊満じゃないけれど。喜んでくれるから嬉しい。
大くんも服を脱ぎ始めた。
相変わらず美しいボディーライン。
いつも頑張って鍛えているだけあるなって思った。
ブラのホックも外されて、スカートも脱がされる。
ショーツだけになった私を優しく抱きしめてくれた。
背中と膝の裏に手を差し込まれてお姫様抱っこをし、ベッドへ運ばれる。
高級旅館の布団は寝心地が良い。
うっとりする私を組み敷いた大くん。
もう一度キスをした。
優しい口づけ。何度も何度も唇を重ね合わす。
大くんの赤ちゃんが……どうしようもなく、ほしい。
心からそう思った。
激しく動き合う意識の中――二人の体温が混ざり合っていく。
突然、動きを止めた大くんは私を見つめてくる。
「美羽。赤ちゃん……作ろうか?」
「え……?」
「いや?」
首を横に振る。嫌なわけがない。同じことを思っていたことに驚いているだけ。
「私も、大くんの赤ちゃんがほしい」
「美羽……」
背中に手を回されて奥深くで一つになった私と大くん。大くんは私にたくさんの愛を放ってくれた。
もしも、授かることが出来れば……。
心からそう思った。
< 204 / 291 >

この作品をシェア

pagetop