シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「んー、気持ちいい」
二人で露天風呂に入っていると、大くんは微妙な顔をしている。
「どうしたの?」
「本当はさ、ゆっくりして風呂に入ってから……と思ったのに、美羽が可愛すぎて思わず抱いてしまったことを反省してる」
「あはは、そんなこと? 気持ち良かったからいいのに」
「うわ、美羽……。もう一度しちゃうぞ」
「もう」
後ろから抱きしめられる。
風が少し冷たくてとても心地が良い。腕を伸ばして空を見上げる。
「将来はダンススクールとかやってみたいんだ。いつまでもアイドルをやっているわけにいかないから」
おもむろに話しを始めた大くん。
私は大くんから離れて見つめる。
「俺の夢を一緒に応援してくれる?」
「もちろん」
「いつになるかわからないけど、頑張るから」
「うん」

露天風呂から上がった私と大くんは、震える手で婚姻届にきにゅうすることにした。
「すげぇ……緊張する」
大くんが記入している横顔を見て、私もドキドキしてきた。
どっちから先に書こうかと話し合って大くんから書くことにしたのだ。
「はい、出来た。美羽、どうぞ」
「うんっ」
ゴクリと唾を飲む。
普段は字を書くことに緊張なんてしないのに、夫婦になる重みを感じていた。
< 205 / 291 >

この作品をシェア

pagetop