シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
芽衣子side
「明人、別れよう」
いつも通り家に遊びに来ていた私の恋人である黒柳明人は、ソファーでクッションを抱えてテレビを見ていた。くつろいでいる彼を黙ってみているのが好きだけど、今日こそは伝えようと決めていた。
勇気を出して別れを告げたのだ。
明人は不思議そうな表情で私の方を向く。
中性的な容姿の明人は、女の私なんかよりもずっと美しい。
「なんで?」
ポツリと呟かれる。
私はテレビを消してカーペットに座った。
「テレビ……見てたんだけど……」
「大事な話をしてるの。真面目に聞いて?」
私と明人の歳の差は三歳。私が上だ。
正直言うと、三十二歳の私は結婚がしたい。
親にだって急かされているが、明人は人に付き合っていることを誰にも言うなと厳しく言っていた。
今日は事務所に所属しているタレントや、働いているスタッフが集まって飲み会が開かれて、そこで紫藤さんは美羽さんを自分の婚約者だと堂々と紹介していた。
同じCOLORのメンバーと付き合っているのに、どうしてここまで差があるのだろう。
明人の愛が本気じゃないからなのではないか。
そもそも、トップスターが事務員である私なんかのことを本気で愛するわけがないのかもしれない。セフレのような存在なのか。
「私、明人を裏切ったの」
「へぇー……。どんな風に?」
ソファーに深く腰をかける明人はアイスティーをコクっと飲んで、冷静なままだ。
「付き合っていること、人に言った」
「…………ふーん」
「怒った?」
「べつに。それで別れるって言ってるわけ?」
「それだけじゃないけど」
女の口から結婚の言葉を出すのには、勇気が必要だ。
プライドが邪魔をする。
「明人、別れよう」
いつも通り家に遊びに来ていた私の恋人である黒柳明人は、ソファーでクッションを抱えてテレビを見ていた。くつろいでいる彼を黙ってみているのが好きだけど、今日こそは伝えようと決めていた。
勇気を出して別れを告げたのだ。
明人は不思議そうな表情で私の方を向く。
中性的な容姿の明人は、女の私なんかよりもずっと美しい。
「なんで?」
ポツリと呟かれる。
私はテレビを消してカーペットに座った。
「テレビ……見てたんだけど……」
「大事な話をしてるの。真面目に聞いて?」
私と明人の歳の差は三歳。私が上だ。
正直言うと、三十二歳の私は結婚がしたい。
親にだって急かされているが、明人は人に付き合っていることを誰にも言うなと厳しく言っていた。
今日は事務所に所属しているタレントや、働いているスタッフが集まって飲み会が開かれて、そこで紫藤さんは美羽さんを自分の婚約者だと堂々と紹介していた。
同じCOLORのメンバーと付き合っているのに、どうしてここまで差があるのだろう。
明人の愛が本気じゃないからなのではないか。
そもそも、トップスターが事務員である私なんかのことを本気で愛するわけがないのかもしれない。セフレのような存在なのか。
「私、明人を裏切ったの」
「へぇー……。どんな風に?」
ソファーに深く腰をかける明人はアイスティーをコクっと飲んで、冷静なままだ。
「付き合っていること、人に言った」
「…………ふーん」
「怒った?」
「べつに。それで別れるって言ってるわけ?」
「それだけじゃないけど」
女の口から結婚の言葉を出すのには、勇気が必要だ。
プライドが邪魔をする。