シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない


明人のメールアドレスを拒否設定してから初めての週末。
友達に合コンを設定してもらった。
もちろん、明人と付き合っていたことは友人には言っていない。知っているのは、美羽さんだけだ。
色々聞かれるのも嫌だったし、私と明人は恋人関係だったのかと問われれば、自信が持てない。ただ、体の関係だけだった二人なのかもね。
いつもよりしっかりと化粧をする。
鏡に写る自分を見て気がつけば歳を取っていたなーって思った。
こんな老いてくるまで結婚しない私を両親は心配しているに違いない。早く安心させてあげたいのに……ごめんね。
過去ばかり悔やんでも仕方がない。前を向いていかなければ、良いことには出会えない気がする。

「芽衣子が合コン設定しろなんて、珍しいね」
友人と少し早めに落ち合ってお茶をしていた。
皮肉に、店内にはCOLORの音楽が流れている。
「婚活しなきゃって思ったの。このまま一人っていうのも寂しいしね」
「そっか。そーだよね。だんだんと年齢を重ねると相手すらしてもらえなくなるもんね」
目の前に座っている友人もバリバリ仕事をしているOLだ。
かなりの美貌のため今までは遊ぶことに命をかけていたらしい。
そのために、握手をするだけでその人がどんなセックスをするかわかってしまうのだとか。
「私も落ち着かなきゃって思うけど、心から好きだと思えた人がいなくてね」
――心から好き。
私は明人のことが心から好きだった。
テレビで見せる表情とは違って、私といると安心した表情を見せてくれた。一緒に眠って目が覚めた時は、いつも私の体に触れていて絶対に離してくれなかった。
「芽衣子」っていつも甘えられたけれど、私が落ち込んだ時はしっかりと抱きしめてくれて背中を擦ってくれた。
お互いに必要な存在だと思っていたのに……。
「今日の相手は弁護士さんだから、絶対ゲットしてよね」
「あ、うん……。ありがとう」
「COLORっていい曲歌うよね」
店内の音楽に耳を傾けて軽くリズムを取っている友達。
「芽衣子の会社ってCOLORも所属してるんだよね? 会ったこととかあるの?」
「まあ、一応ね……」
なるべく避けたい話なのに、COLORが有名すぎて避けて通れない。
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