シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない

そのまま眠ってしまった私は一度夕方に目を覚ましたが、薬を飲んでいなかったせいで体は熱いまま。息も苦しかった。だけど、着替えをして病院に行く気にもなれない。
頭が割れそうなくらい……痛い。
我慢しつつも、更に眠り続けると、次に目を覚ました時は真っ暗だった。
ぼんやりする意識の中に飛び込んできたのは、チャイムの音。
動きたくないから無視することを決めて目を閉じるが、しつこい。何度も、何度も鳴らされる。
ベッドから降りると、ふらふらして歩きづらく、壁を伝って行く。
インターホンの画面を見ると、明人が映し出されていた。
誰かに見られてはまずいと思って慌ててオートロックを解除する。
「……………これも夢なのかな?」
混乱しつつ玄関までなんとか行って鍵を開けると、息が苦しくなってその場に座り込んでしまった。
ヤバイ……死にそう。気持ち悪いし頭は割れるほど、痛い。
横になりたくて玄関でそのまま倒れた。
再びチャイムが鳴る。乱暴にドアが開く。
「芽衣子!」
明人の声に聞こえたけれど……幻聴だろう。私が明人を好きすぎるから――。

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