シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
ナースが入ってきた。
「ご気分はいかがですか?」
「かなりいです」
体温計を渡される。脈拍を調べて点滴チェックをしてくれた。
「顔色もいいですね」
「ありがとうございます……」
にっこり微笑んでくれるナースの笑顔に安心して、癒される私。そこにドクターが入ってくる。かなりイケメンで若いのに胸には副医院長と書かれていた。
「おはようございます。主治医の高瀬です」
「……おはようございます」
「昨晩はかなり高熱だったため入院していただきました」
そのタイミングで体温計が鳴った。熱は平熱に下がっていた。
「食事は出来そうですか?」
「はい」
「それであれば、明日に退院しても問題ないので、今日一日は安静にしていてください」
「わかりました」
ニヤリと笑い出すイメケンドクターさん。
「な、なんでしょうか?」
「ずっと心配して付き添っていましたよ。素敵な彼氏さんですね」
「はい?」
「COLORの……黒柳さんですよね」
「……」
イケメンなのにずかずか聞いてくるドクターさん。変な人。
「お大事に。何かあれば遠慮無く言ってくださいね」
出て行ったドクターとナース。私は頭を抱えたい気分になる。何もやることがないと色んなことを考えてしまうのだ。
――もう、撮られたけど。近いうちに載るんじゃない
明人の言葉を思い出す。
どうしよう。
大事な我が社のアーティストにスキャンダルを作らせてしまうなんて。
明人の人気がガタ落ちになったら……。
せっかく決まった大きな仕事が駄目になって、会社にすごい損害賠償を払うことになるかもしれない。
ああ、恐ろしい。どうしたらいいのだろうか。
真剣に、不安になる。
誰かに相談したいけど……心を開いて言えるような人はいない。
困ったなと思っているとドアが開いた。
入ってきたのはお母さんだった。
「芽衣子、大丈夫なの?」
「うん」
誰から聞いたのだろう。
お母さんは私の顔を見て安心しているようだった。
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