シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
明人side
芽衣子を病院へタクシーで連れて行き、朝になると社長から電話が鳴った。人が少ない階段で電話を折り返す。
『明人。朝一で会社来なさい』
「……えっと。なにかやらかしましたか?」
『自分が一番わかってるでしょ? 目立つ行動をして』
「…………はぁ。了解です」
電話を切って壁に背をつけた。
撮られちゃったかな。
病室に行くと、芽衣子は体調がだいぶ良くなったようで、安心した。
見届けてから事務所に直交する。
マネージャーが事務所で待っていた。
「おはよー」
「呑気すぎますよ……。撮られましたよ。どうしましょう」
「べつに……焦ることないでしょ?」
くすっと笑った俺の態度がイラついたのかマネージャーは、眉毛をピクピク動かし鼻息を荒くした。
社長室に行く。
午後からの仕事だから時間はたっぷりある。
ノックして入ると社長は「座りなさい」と言った。
二人きりの社長室。嫌な空気が流れている。
座るとテーブルに置かれたのは数枚の写真。俺と芽衣子がタクシーに乗り込んでいるところと、病院に到着したところだ。
「明後日発売のものに載せるそうよ。これは、明人で間違いないわね」
「はい」
「一緒にいる女性は誰?」
何年も誰にも言ってなかったから少し抵抗がある。
ドキドキしながら名前を告げた。
「……芽衣子」
「芽衣子って、芽衣子?」
こくりと頷いた俺。
社長は意外そうな顔をしていた。
「いつから?」
「五年前から」
「ずいぶんと黙ってたのね。芽衣子さんとはどうするつもりなの?」
「大樹の結婚が落ち着いたら俺もって思ってるけど……芽衣子次第かな」
「ちゃんと報告しなさいって言ったでしょ?」
「……すみません」
「大人なんだから恋愛は自由だけど、対処方法……作戦を練る必要があるのよ」
眉間に皺を寄せながら言う社長。
言っていることが正論すぎて何も言い返せなくなった。
黙り込んだ俺に社長は深い溜息をついた。
「大樹は十一月三日に入籍。明人はどうしたい?」
どうしたいと聞かれても芽衣子は俺を許してくれるかわからない。合コン男ともうすでにいい関係かもしれないし。
爪を噛む。
困ってしまうとついついやってしまう癖なのだ。
はっとして、手を膝に置いた。
「まだ……プロポーズをしてないし。ちょっと喧嘩中で……芽衣子はどう思っているかわからないけど」
「あんたねぇ」
「……来年。来年……結婚したい」
「そう」
実を言うと結婚なんてまだまだ先のことだと思っていた。
一番、実感が湧いていないのは俺。