シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
「それじゃあ、雑誌に載るなんて余計に大変なことだよね」
立ち上がった芽衣子はマッサージチェアーに座って頭を抱える。
たしかに、あまりいいことではないけど、さほど影響はないと思う。俺は気にしてないし。
大樹みたいに女性ファンが多いわけじゃないから。どちらかと言うと、ファンは俺を友達みたいな感覚でいてくれている。
「芽衣子」
「なによ」
俺はそれよりも何よりも、これからプロポーズするのだ。
おかしなテンションになってきている。手に汗がかいてきた。
もう、はっきりさせないと。
「あのさ、これ」
パンツのズボンから小さな箱を取り出す。
そして、テーブルに置いた。
「これ……もらってほしいんだけど」
「なに?」
「あのさ、俺色々考えたんだ。俺……芽衣子がいなきゃ生きていけない」
元々大きめの目を更に開いて驚いている表情を見せた。
「芽衣子。結婚してください」
「えっ」
指輪の入った箱を開けようとしないから、俺が開けて指輪を指で摘んだ。震えるが立ち上がった俺はマッサージチェアーに座る芽衣子に近づいた。
「左手の薬指に入れていいかな」
「ま、待って」
焦っている芽衣子。マッサージチェアーから立ち上がった。
「結婚したいとか言うから焦らせちゃったんだよね。いいんだよ」
悲しそうな顔をして受け取ろうとしてくれない。
これってプロポーズ失敗ということ?
今まで俺が不安にさせてきた代償なのかもしれない。
「明人なりに考えてくれたのかもしれないけど、もういいの。明人みたいなすごい人と五年も過ごせた私は、幸せものだったから」
「……俺と結婚したくないの?」
「それは望まないことにしたの」
「はあ?」
軽くパニックを起こしている俺は、無理矢理、芽衣子の左手を掴んだ。
引っ込めようとするが力いっぱい自分の方に引く。
「芽衣子……どうして、なんで、わけがわかんない。指輪つけてよ」
芽衣子に睨まれて俺は手を離した。
これじゃあ、全く成長してない。はじめて芽衣子を抱いた日も強引に奪ったのだ。
「ごめん……。俺は、芽衣子を好きになってから一度も気持ちが変わったことがなかった。芽衣子のことを心から愛しています。一生、守っていくので結婚しよう」
真剣に見つめながら、俺は精一杯伝えた。
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