シリーズ全UP済。果物のように甘いだけじゃない
1 ―出会い―
久実12歳・赤坂18歳
赤坂side
仕事をしながらふっと思い出すことがある。それは、先日届いたファンレターのことだ。
心臓の病を抱えているということは……、生きられる時間も短いのだろうか?
どんな治療をしているのだろう。薬を飲めば治るのかな。手術をすれば良くなるのか?
知識の全くない俺はなんとなく考えていた。
今日はCOLORとしての雑誌の取材だ。デビュー間もない俺らは、与えられた仕事を一生懸命こなしている。そのおかげで少しずつ知名度は上がってきたが、はっきり言ってまだまだだ。
「じゃあ、今度は三人共カメラ目線で笑って」
にっこりと作り笑顔を向ける俺ら。COLORのリーダー紫藤と、ふわふわしている黒柳と、俺、赤坂は必死でこの世界で生きていこうと誓っていた。デビュー出来たチャンスに感謝をして。
休憩に入り、楽屋で弁当を食べているが、あんまり会話はしない。
グループだとは言え、知り合ってまだ間もないのだ。お互いのことをあまりわかっていなかった。
無言なのも嫌だったから、話題を探す。……が見つからん。
「俺、病気の女の子からファンレターもらったんだけどさ……」
ポツリと呟くと二人は俺を見る。
「なんか、元気もらったって言われてさ。そんなこと言われたことがなかったから、嬉しくて」
「へー……俺らでも希望なんか送れてんだ」
黒柳がふんわりとした口調で言う。
「お見舞い行こうと思うんだけど。よくあるじゃん。芸能人がお見舞いしてる話。どう思う?」
「いいんじゃない? 勇気づけたいって心から思うなら」
「心から……か」
写真を思い出し文面を思い浮かべる。もしも、久実ちゃんが笑顔になるなら、やっぱり行きたい。
「まあ、本気で元気になってほしいと思うけど」
「それならいいと思う」
大樹が賛成し、黒柳も賛成してくれた。
数日後、社長に久実ちゃんを励ましに行きたいと伝えに社長室に向かった。
「そう。そういうことならいいけど。でも、ファンが増えてきたらそんなわけにもいかないからね」
「わかってます」
「その子だけにしなさい。あなたたちはトップアイドルになるんだから。自覚を持つのよ」
俺にファンなんてこの先、出来るのかと思った。
まあ、後ろ向きなことばかり考えても仕方がない。今は前向きにレッスンに励んでいくしかない。
早速、休みが取れた日に会いに行く。
2月27日。
春が近いがまだまだ寒い日が続いていた。
久実ちゃんは都内の病院に入院しているらしい。午前中のうちに会いに行こうと思って朝早くから電車に乗っていた。
夜は付き合ってる彼女と会う約束がある。
手紙に書かれていたお母さんの携帯番号に連絡を取って、病院の玄関で待ち合わせている。
久実ちゃんは喜んでくれるだろうか。電車に乗りつつぼんやりと考えていた。